頭に当たった人は、長身でメガネのスマートな人だった。

――ドクン。

私はその人を、人目見ただけで好きだ、と思ってしまった。

長身。細身。インテリメガネ。優しそうな瞳。

好みだった。

「いえ。痛くありませんでしたか?」

柔らかな笑み。

「は、はい。大丈夫です――……」

私は、小さな声で返事をした。

キンチョー、していたんだと思う。

「スカート、汚れてない? 地ベタに座っちゃって」

「はい、大丈夫です。これ、ナイロン製ですから」

私はピンクとマーブルチョコ色のまだらのスカートをはいていた。

「そう」

と言って、彼は微笑んだ。

彼は、砂浜を遠くの方から海に平行に歩いてきたらしい。