「夢大くんの家で、これ、食べなさい」

とお母さんが重箱を出してきた。

煮物やら揚げ物やらの香りがした。

「じゃあ、おいとましましょうか」

夢くんはソファから立ち上がりそう言った。

「あ、う、うん」

夢くんに促されるように私たちはリビングを出、玄関でお父さんとお母さんに見送られた。

「じゃあね、うちの梨聖を頼んだよ」

「梨聖ちゃん、週に一度は家に寄るのよ」

私はこんな展開に戸惑いつつも笑った。

「うん。じゃあね」

お母さんから繕ってもらったおかずをテーブルに乗せ、ごはんとみそ汁は自分で用意して、ふたりそろって夕食。

いただきますを言って、さあ食べよう、という刹那だった。

夢くんは、箸をを持ちどれを食べようか、迷っているように見えた、けれど。

「――なんか、ダメだ。食欲ない」

ごめん、と言って夢くんは箸を置き、ベッドにもたれかかった。