「あっ、ちょっと!」

「いっただっきま~す」

ぱくり、と帆乃香が、私の塩キャラメルを食べてしまった。

「ん~。美味しい~」

「ちょっとぉ。まだ私、ひと口も食べてないのに」

「隙があるからいけないのよ」

反省する素振りも見せない帆乃香。

あらためて私は塩キャラメルに向き直る。

ああ、美味しさが半減した感じ……。

すかさず私も、手を伸ばす。

「あっ、私のバナナ!」

悔しいから、私も帆乃香の一番大きなバナナにフォークを刺した。

そして、ぱくり。

「ん~、美味」

「も~う」

「隙があるからよ」

私が言うと、笑いが起きた。

こんな楽しい仲間。

私は、まだこの時点では何も知らずにいた。

これから起こる、出会いと別れを。