行き道も、彼女はほとんどしゃべらなかった。
「ここ」
「…じゃ、僕は外で待ってるよ。…頑張って」
「…うん」
彼女はひどく緊張しているようだった。
当然か…。
「何のご用ですか?」
「あの、きのうは生意気なこと言ってすみませんでした…」
「…わかればいいのよ、わかれば。学校に行かなくてもいいなんて、とんでもない助言ですよ!」
「や…、ですけど…」
「あの子のことは親の私がよーくわかってるんですから!」
玄関先で話す声が外まで聞こえていた。
彼女が謝っても、まだぐじぐじ言い続けている…。
そっと覗いてみた。
…おっかなそうな親御さんだ。
「…あ、賢ちゃん」
奥に子供が顔を覗かせた。
なんか…昔の彼女に似ている。
「賢、あっちに行ってなさい!」
母親は怒鳴り、子供はさっと姿を消した。
…何もあんなに怒鳴ることないのに。
「ご用はそれだけ?ならもう帰ってください」
「あの…賢ちゃんと遊べませんか?」