ーピンポーン



「……………」



チャイムを鳴らしても出てこないから…


一瞬ヒヤッとした。





しばらくすると、ゆっくりドアが開いた。




「おはよう…!」

「おはよ…。早いね…」

「ごめん、昨日これ啓太くんに渡してくださいって頼まれたのに忘れちゃって…」

「ああ…。ありがと」



彼女はぼんやりしているようだ。



「…ゆうべは眠れた?」

「うん…。高原くんはこれから仕事なんだ?」

「うん」

「いいね、安定してて…。啓太のこれ、求人情報誌。私この前の面接落ちちゃった。ははは…」



彼女は力なさそうに笑った。



「まぁ、焦らずじっくり決めたらいいよ。援交みたいなのはだめだぞ!」

「わかってるよー。もう、早く行かないと遅刻するよ!」

「お、おう。行ってきます」

「行ってらっしゃーい」




…なんかいいな、こういうの。



と、ひとりで小さな感動を噛み締め歩いて行ってると



「ねえ!」



彼女が呼び止めた。



「付き合ってあげてもいいよ!」