「たそがれてないで送ってってやれよー」
中から悠二はからかうように言った。
「…………」
…余計なお世話だ!
「福澤さん!」
「え?…なんか忘れてた!?」
「いや、弟に送ってけってカギ閉められちゃって…。あいつ頑固だから絶対開けてくんないんだよ。送らせて」
「…すぐそこなのに。じゃあ…わかった」
せっかく悠二が余計な気をまわしてくれたけど、僕らは何も話さないまま歩き、あっという間に彼女のアパートが見えてきた。
とこで、彼女が口を開いた。
「…弟さんも東京に来てたんだ?」
「ああ。あいつはただ遊びに来ただけなんだ」
「そう。…なんか誤解したのかなぁ?送ってけーなんて。ごめんね、いい迷惑だよね!」
「迷惑なんかじゃないよ…」
ここのところ、この言葉に敏感になっている。
「…私の方が迷惑だ!こんなとこ彼氏に見られたら誤解されちゃう!」
思いついたように、彼女はそう言った。
「なんで嘘吐くの…?」