後輩は、僕がこぼした水をせっせと拭いている。


それをやめさせた。



「いいんですよ!気にしないでください」

「君に可能性なんてないから!…僕には好きな人がいる。気持ちは絶対変わらないから」



後輩は、拭いていたハンカチをテーブルに投げつけた。



「そうですか!私だって…なんか血迷ってたみたいです。先輩のことなんか好きじゃありません。もう忘れてください」



そう言い、ツンツンして帰っていった。







…なんだったんだ。

僕がふったはずなのに…なんだか僕がふられたみたいじゃないか。



簡単に好きって言って、簡単に忘れんじゃねぇよ…



昼休みの、ほんの数十分の出来事だった。
まさにキツネにつままれたような気分だ。



おかげで…彼女に誤解されたかもしれない。






ープルルルル…






呼び出してはいたけど、彼女は電話に出なかった…。






午後は仕事に身が入らず、失敗が多くなった。



「どうしたんだよ、おまえらしくないなぁ」