「僕が食べようか?」

「いいの?間接チューだよ?」

「いいよ、そんなの…」


僕はそんなこと気にもせずに言った。


彼女は僕がグラタンを口に入れるのをにこにこしながら凝視していた。


「あはは、間接チューだぁ!ははは…」



…かつて僕のことを好きだと言ってくれた彼女が、からかうようにして笑ってる。

僕の方がなんだか恥ずかしくなってきた…。






「もう夜中だね。高原くん、帰りを待ってる人がいるんじゃないの?」

「そうだな。田舎の家族はな。この前連休に3年ぶりに帰ったんだ。そしたらすごい喜んでくれた。福澤さんもこんなに遅くなって平気なの?」

「私は待っててくれる人なんかいないもん。自由気ままで楽しんでます!」

「…田舎は?」

「そうだねぇ、かれこれもう6年くらい帰ってないかな?」

「僕よりひどいじゃないか。たまには帰ってやれよ。…って僕も弟に怒られたんだけどな」

「さぁて、気ままなひとりアパートに帰ろっかな」

「あ、ちょっと待って」


彼女は伝票を持って席を立った。