「俊平…?」




なんだか…涙が溢れて止まなかった。
それを隠すために、僕はいつまでも彼女を抱きしめていた。


…でも彼女は気づいていただろう。
何も言わずにそのままでいてくれた。









「ごめんな、いきなり…」

「…まぁお茶でもどうぞ。田舎から送ってきたって啓太がくれたの」

「ありがとう」



彼女が入れてくれたお茶は、いつもにまして優しく感じた。


ほっとした。






周りが誰が、親が何て言おうと、僕は今目の前にいる彼女を愛しているし、過去を否定したりしない。


過去は関係ない。


誰だって、僕だってそう見えても完璧な道を歩んでるなんて不確かだ。

みんな同じだ。

完璧な人間なんて…






「今朝、賢ちゃんの様子見に行ってくれたんだってね」

「ああ、気になって…。なんで知ってんの?」

「俊平のお母さんとバッタリ会って教えてくれた。ちょうど夕方の電話の時!」

「そうだったのか…。母さんそんなこと何も言わなかった」