その言葉がハッキリ聞こえた僕は、とっさに彼女からケータイを取り上げ、しゃしゃり出てしまった。
「どういう意味ですか!?」
『あなた誰!?福澤さんの男なの?そういうとこ子供に見せないでちょうだい!』
「僕らは何も…!」
「あの、連れて帰ります。申し訳ありませんでした」
彼女が冷静にそう言い、電話を切った。
僕の方が怒りに震えていた。
でも彼女だって…
必死に抑えていたんだ。
「おねえちゃん、ごめん…。ぼくのせいで……」
賢ちゃんは震える手で彼女の袖を掴み、震える声で謝った。
「…大丈夫!ね、大丈夫だから」
「ぼくひとりで帰るよ…。ひとりで来たんだから…」
「うん…でも連れて帰りますって約束したし、ついてくよ」
賢ちゃんの家が見えてくると…
門の前で母親とお巡りが話していた。
…本当に電話したのかよ。
「あ、あの子です。賢!」
母親が突進してきた。
そして母親は賢ちゃんを引っ張り、僕らを睨みつけつけた。