「腹へったなぁ。あ、もう昼とっくに過ぎてる」
「3人でどっか食べ行こうよ!賢ちゃん何食べたい?」
「…でも」
「あ、おうちには私が電話しとくよ」
さっきまで笑っていた賢ちゃんの表情は、初めて見た時に戻った。
「…大丈夫だよ!…かけてみるね」
彼女は恐る恐る賢ちゃんの家に電話をかけた。
「……あ、福澤です」
『あなたもしかしてうちの子連れ出したんじゃない!?』
母親はいきなり、外にもハッキリ聞こえる大きな声で怒鳴った。
「連れ出した…って、今賢ちゃんと一緒ですけど…」
『やっぱり!どういうことなの!?うち中探してもいないから…どれだけ心配したと思ってんのよ!』
賢ちゃんは、母親に黙って出てきたようだ。
「ごめんなさい、すぐに連絡を差し上げればよかっ…」
『警察にも電話しました。あなた誘拐犯で捕まるんじゃないかしら?』
「え!?」
『とにかくうちの子を返してちょうだい。あなたなんかと一緒にいると賢はどんどんダメになっちゃうわ』