『ちょ、先輩!』


先輩は何回も呼んでも返事も振り返りもしないで真っ直ぐ目的地に進む。


いったい、どこに向かってるんだろう…



上履きのまんま校庭に出ると、先輩は立ち止まった。



「…こ…で」

『え?』


先輩の声は小さく私は聞き返すと、やっと振り向いて向き合う形になった。



「ここで、お前に会った」


先輩が横を向いて顔を上げると私も釣られて上げた。



『…桜の、木』


そこには綺麗な桜の木が立っていた。

あぁ、ここは私が真衣と話していた場所だ。



「屋上から見てて、初めは遊びのつもりだった」


すると先輩は桜の木を見つめながら、ポツポツと語り始めた。



「俺は女なんか誘えばついてくるマヌケな存在だと思ってた、けど…」

『けど?』


今度は桜の木から私に視線を向けた。