12/04 木曜日

「位置についてよーい」

―ドン

「きゃー」

静かに走れよー。

あたしの本音。


スタート前

「美優、一緒走ろ?」

それは倫紀で…

「順位成績に関係あるし集団で走るのはいけないんだよ?」

ただ
あたしが1人で
走りたいだけのこと。

「お願いー!倫紀は1人なんよお」

「わかった。アップしとこー?」

「おっけいー!みゆちゃんのペースにあわせるから」

―う゛

胸が締め付けられる気がした。

あたしは
もともと不整脈がある。

けど寒いせいだって
思った。

2回ほど
病院で検査したことがある。

それは
自主的なことじゃなくって
学校での検査に
ひかかったから。

何度やっても
心電図がきれいにとれなくて
イライラされたこともあった。

力入れないで

って怒られたりして。

力入れてませんって

いう気力すらなくなった。

だから
忘れたい。

「み、美優!とも疲れたー!」

「あ。ごめん…」

「美優速すぎ。もいや。」

えー!

「ごめん。」

「うっそー!!美優ウケる。とりあえず美優頑張って!」

結局バラバラに走った。

3㎞も走った。

練習では
2㎞しか走ってないから
本当につらかった。

公園の外周

トラックを走った。

疲れて
トラックでは
2人に抜かされた。

「美優ちゃん!」

話かけてきたのは
西澤絵理。

小学校が同じで
家も近い。

最近は
登下校も一緒。

いつも倫紀といる。

「おー。どうだった?」

「じゃーん!」

見せてきた紙には
9という数字。

「やったじゃん!」

絵理には一桁
という目標があった。

「美優ちゃんは?」

「恥ずかしいな。」

あたしは17位だった。

けど3年間で
一番いい。

女子は1クラス約15人。
その6クラス。

つまり約90人。

だけど見学いるから
もっと少ない。

だけど人数とか
タイムとか
関係なかった。

ただ走りきったことだけが
嬉しかった。