「昔、父上から聞いた話なんですけど」



うん、とあたしは頷く。




「櫻刀には力が宿っている。
その力とは、握った者の底に秘められた力を引き出す力。
櫻刀を握れば、誰も負けない剣士となる。

櫻刀保持者は、歴史に名を残すぐらいの偉い方々も使っているような刀で。
櫻刀を所持していれば、その人は強いといつしか言われるようになりました。

今では櫻刀を持つだけで強いと判断され、不戦勝できるんです」




ふ、不戦勝!?

この刀を持っただけで!?




「しかしそんな名の高い櫻刀ですが、現在どこにあるか不明だったんです。
最後に持っているのが、豪一郎(ごういちろう)さんと言う方ということは分かっていたのですが、その豪一郎さんがどこにいるかわからなかったんです。

小町さん、豪一郎さんとお知り合いなんですか?」




あたしは首を横に振る。




「豪一郎さんは知らないよ。
あたし、海鳴さんからもらったの」

「海鳴さんから?」




海鳴村を出て行った日のことを思い出したのか、遠矢くんは顔をしかめる。

遠矢くんの過去を聞いたからか、何だか遠矢くんの喜怒哀楽が激しくなった気がするな。




「あたしが遠矢くんに会いに行くって言ったら、渡してくれたの」

「反対はしていなかったんですか」

「最初は、あたしが三神村に行ったことないから危険だって止めたんだけど、あたしって頑固だから引かなくて、結局海鳴さん折れちゃったの。
まぁ折れた原因が、ばぁちゃんと紅葉さんにあるみたいだけどね」

「梅子さんと紅葉さん?」

「あの2人ね、王司さんの剣の師匠だったの。
師範って紅葉さんは言っていたよ。
あたしが沢山いた三神家の人たちを突破出来たのも、門の前でばぁちゃんと紅葉さんが助けてくれたお蔭」




あとでお礼言わないとな。

あたしはふふっと笑う。