常に笑顔の遠矢くんからは考えられないほどの、哀しい過去。
あたしは聞きながらも、ずっと泣いていた。
そんなことがありながらも、遠矢くんは桜のように笑っていた。
その強さに、あたしは羨ましく、憧れを抱いたんだ。
「復讐…ッ?」
遠矢くんの口から出てきた、物騒な言葉。
「僕のお父様は原因不明の病に侵されていた。
治らないと医者に言われていて、お父様は絶望したんだ。
僕が三神家に引き取られて直後、僕は父上の部屋に会った紙を見たんだ。
そこに書かれていたのは、お父様を殺したことだったんだ」
遠矢くんのお父さんを殺した…?
「父上は、剣の師であるお父様を恨んだ。
何故自分よりも剣の腕が高いんだ、と。
師なのだから当たり前なのに、父上は許せなかった。
小さな嫉妬心はやがて大きくなり、父上は他国から毒物を仕入れて、お父様の飲み物に混ぜたんだ。
その毒物はゆっくりとお父様の体を壊していき、最終的には不治の病で亡くなったとするつもりだったんだ。
僕はそのことを聞いて、父上を恨んだ。
父上に抗議しに行ったら、父上も不治の病で倒れた。
僕は父上に気に入られていた。
その気持ちを利用してやろうと考えた。
僕が三神王政になる。
そして、人を殺すと言うことを止めさせるようにしたいと決めたんだ」
遠矢くんは、
自分のお父さんと同じ道を歩むことがないよう、
誰かが誰かを殺す、と決めないよう、
三神王政の座についたんだ。
三神家は人を殺すのが当たり前。
三神家をなくせば、殺すと言う単語はなくなる。
遠矢くんはそう考えたのだろう。