次の日の朝、私はいつもより一時間以上早く起きて台所に立った。
拓真が起きてくる気配はまだない。

呑気な雀の声が聞こえ、朝日が燦々と我が家の小さな居間を照らしている。

昨日とは打って変わり今日は一日晴天の様だ。
いつも通りに朝の情報番組を聞きながら私は作業を進めていた。


「あず? おはよう」

「……おはよ」


拓真はリビングのドアを開けると少し驚いた様に私に声を掛けてきた。
私は振り向きもせずに挨拶を返す。


「珍しいね。お寝坊さんのあずが起こされる前に起きてるなんて」


拓真はそう言いながら食卓椅子に腰かけて、テーブルに置いておいた新聞を広げた。

けれど新聞には余り集中していないようだ。
朝ごはんがあるなんて、とつぶやいているからその視線の先はテーブルの上の筈だ。


「……謹慎処分だからね。早く登校しなきゃいけないのよ。昨日あんたも聞いてたじゃない」

「ああそっか。あずはホントマジメだよな」

「うるさい」


からかうように言う拓真にいつも通りの罵声を浴びせながら、私はもう朝食は済ませたから片付けはしておいてほしいとか、今日は燃えないゴミの日だから出がけにまとめてあるゴミを出しておいてほしいとか、いつも通りの業務連絡を済ませた。


「じゃあ、私もういくからね」

「あ! あず!」


私は自分の分の皿洗いを終え、カバンを持ち出かけようとすれば拓真が素っ頓狂な声を上げた。
何事かと振り返る私。