+++++

あれはいつのことか――。
私は、小学校に通う道を歩いていた。

「××××××」

目の前に現れた色の黒い青年が、真っ赤に泣き腫らした目でテンション高く何かを言い散らした。

怖いくらい、真剣な目で。
私に何かを訴えていた。

「――何?」

「オヤジガシンダ」

彼は、片言の日本語をその唇から搾り出した。


「それは契約違反ですよ。
 お嬢様には接触しないという約束、お忘れですか?」

近くの黒塗りの車から、初老の白人が降りてきて流暢な日本語でそう言った。

尚も喚く青年に、今度は別の言語で何かを言う。


しゅんと、叱られた子犬のように項垂れた青年を連れて、初老の白人は再び黒塗りの車に戻っていく。