私は腕につけられた輪に目をやった。
もちろん、抜くことは可能。

――けれども。

誰も信じるなといわれんばかりに大人になった響哉さんが、唯一信じてくれている私まで裏切り者になるわけにはいかないわ――。

私はそおっと、掛け布団の下に入る。

途端。
ふわりと背中から抱きしめられた。

「マーサ。
 服を着たまま寝るつもり?」

寝惚けたような声が耳に入る。

「だって……」

パジャマに着替えたくても、私、身動きがとれないじゃない。

「お兄ちゃんが着替えさせてあげる」

本当に寝惚けているのか。
はたまた、寝惚けたふりを装っているのか――。

響哉さんは蕩けるような声でそう言うと、器用に私の服を脱がせ始めた。