「あれほど自己中になるよう育てられた響哉が、熱心に人のことを考えているサマなんて、初めて見た」

それはそれで面白かったよ、なんて。
ドラマでも見たかのような軽口で言うと、ようやく窓を閉めて、私の目の前の椅子に座ってくれた。

真っ直ぐに視線が絡む。
私は瞳に決意をこめ、唇をひらく。

「それで、カルロスはどうして私を殺そうとしたの?」

殺されかけた私に、聞く権利はある。

――だから、教えて、と。

懇願の想いを言葉に詰めた。

はぁ、と。
佐伯先生は決心のつかないような、ためらいの色を帯びたため息をついた。

それから、私の隣に腰を下ろし私の髪を撫でた。


「俺だって、友人の可愛い娘に――あえて今更辛い思いをさせたくない」