「それでも、結局、事故の件で解雇され、その後男は自殺した」

衝撃を覚えた私は瞳を閉じる。

あの事故の加害者はもうこの世には居ないんだ――。

そんなこと知らなかった。
加害者が誰で、どこで暮らしているかなんて、考えたこともなかった。

まさか、自殺していたなんて。

煙草を吸い終えたと思われるのに、先生は、こちらを振り向こうとはしない。

「……で、調査の結果、この事故に裏がないと知った須藤家は自殺した男を気の毒に思い、彼と同居していた息子に仕事を与えることにした」

私は唇を噛む。
そこまでに、間違いはないように思う。

「響哉さんは、そのことを?」

「知らなかったんじゃない?
 響哉は君の心の傷を癒す方法についてはしょっちゅう考えていたけれど、加害者のことにまで思いをめぐらせてはなかったと思うよ」