「……煙草を吸っても?」

先生はよほど切り出したくないのか、私が頷いたのを確認してから、窓を開けて煙草に火をつける。

「あんまり、感情移入せずにヒトゴトの話だと思って聞いてくれる?」

「……分かりました」

先生は窓の外を見たまま話し始めた。

「トラックが突っ込んできたのが例の交通事故の原因っていうのは知ってる?」

「はい」

「そのトラックを運転していたのが、カルロスの父。
 葬儀の日も入り口でひたすら謝っていた。
 たどたどしい日本語と、スペイン語で――」

私は息を吸って、出来るだけ動揺を見せないように口を開いた。

「別に、絶対に許さない、なんて誰も言ってないんでしょう?」

「もちろん」