「で、今日聞きたいのは須藤家の秘密?」

佐伯先生がくすりと笑う。

「違います。
 それも気になるけど、やっぱり今日のうちに解決しておきたいの。
 先生は、聞き取れたんでしょう?アイツの言葉」

「カルロスのスペイン語」

「スペイン人?」

ヨーロッパっていうより、中南米って感じだったけど……と思いながら問い返す。

「いや。
 メキシコ人」

「……で、アイツのお父さんが事故の相手なんですよね?」

忌々しい記憶が甦って、手が震えてくる。
封印したはずの記憶は、響哉さんが現れてから、少しずつ染み出し始めていた。


強い衝撃。
鼻につく、ガソリンの匂い。
悲鳴。
そして、むせ返るような血の匂い――。