「ん?
 ここは、婚約者の部屋に決まってるじゃない。
 つまり、真朝ちゃんの部屋ってこと」

「……変じゃないですか。
 婚約者の部屋が用意してあって、当の響哉さん本人の部屋がないなんて」

「だから、言っただろう?
 須藤家っていうのは、怖ろしく変なところなんだよ。
 自分の常識は全部使えないと思ったほうが良い」

先生は近くの椅子に座ったまま、真顔できっぱりとそう言い切った。
目が笑ってないのが、本当に怖いんですけど……。

「一応、須藤家では、長男が20代で男児を設ければ当主になれるという決まりがある。
 だが、響哉は23歳のときに、3歳の君を婚約者として家族に紹介した。
 そこでルールは都合よく変更された。響哉に限っては婚約者が20歳になるまでならOKだとね」

「……そんなの、私、聞いてないよ……」

知らないうちに自分が須藤家のルール変更に寄与していたなんて、初耳で、どうして良いのか分からない。

「響哉は別にここの次期当主に進んでなりたいわけでもないから、そんなこと改めて君には言わないさ。
 『可愛いマーサにプレッシャーなんてかけたくない』って思ってんだよ、きっと」


だから、その声真似、ものすごく似ているのでやめてください……。
ドキッとして、赤面しちゃうじゃない。