響哉さんが私の左腕に、腕輪のようなものを通していく。

驚いて目をやれば、それは、柔らかい素材の――シリコンか何かだと思われるような――輪だった。端に穴が開いていて、そこにリボンのような紐が通してある。

その紐の端には同じような輪があって、それは響哉さんの右手首に繋がっていた。

「だから、そういうのは万が一にも首を絞める恐れがあるから駄目だって言っただろう?」

あきれ返っている佐伯先生の説教にも応えず、響哉さんはシャツを着たままばたりとベッドに倒れこんでしまった。

「……とりあえず、布団かけてやったら?」

どうして良いか分からずに、身動きできない私に、先生が呆れた口調で言い放つ。

響哉さんを見ると、なんら躊躇うことも無く眠りに落ちている。

私は響哉さんに布団を掛け、自分はベッドの足元の方へと移動して座り、リボンが伸びきらない距離を保つ。

「変なヤツ」

先生はため息交じりにそう呟き、私の向かいに簡易椅子を持ってきて座った。

「この部屋に、響哉さんの着替えが無いってことは、いったい誰の部屋なんですか?」