「嫌っ」

私は響哉さんを振り払って起き上がった。

「アイツはいったい何て言ったの?
 先生、教えてください」

乱れた髪をほとんど無意識のうちに撫でて整えながらそう言った。

「アイツが言ったことはまた明日にでも教えるよ。
 今日はとにかく、ここでこのまま休むんだ」

先生はそう言って、私の左手を掴んだ。

「あまり手を動かすと、痛むだろ?」

不審そうな目の私に向かって、先生はなんてことない顔でにこりと笑う。

「知ってる?
 響哉、今朝、俺に手錠を注文してくれって頼んだんだぜ?」