「頼りないね」

ため息混じりの低い声が聞こえ、私は思わず身体をびくりと震わせた。

「――覗きなんて、趣味が悪い」

「だったら、部屋のドアくらい閉めておけ」

入り口でそう言った佐伯先生は躊躇いもせずに、部屋の中に入ってきた。

「ちょっと……響哉さん?」

焦った私が身じろぎしているのに、私の上に居る響哉さんは、むしろ艶やかに微笑むばかりで、困った様子は微塵も無い。

「そう。
 閉め忘れていたなんて気づかなかったな」

――嘘ばっかり。

言いながら、響哉さんは私の首に巻いてある布を外していく。

「これ、包帯に変えてくれる?」

「……ハイハイ。
 いくらでも変えてあげるから、そこ、どいてくれない?」