「私――。
 指輪が、なくて――
 折角、響哉さんから貰ったのに――」

響哉さんは、ああ、と、困ったように息を吐いた。

「それは、これのことでしょう? マーサ」

と、まるで手品の一部のようにポケットから指輪を取り出した。

「マーサが失くしたわけじゃないでしょう?
 仮に失くしたとしても、俺は怒らないから――。
 そんなことで謝らないで。でなきゃ、二度とプレゼントできなくなってしまう。
 モノはなくなるし、壊れるものなんだよ」

分かった? と、響哉さんに聞かれて、私は渋々頷いた。

「でも、折角もらったから――。大事にしたかったのに」

そう呟く私の額に、キスが降って来る。

「何度だってあげる。
 だから、そんなことで悲しまないで。
 ――それより、他に俺に言いたいことがあるんじゃないのかな?」

――言いたいこと?

私は首を捻って考える。

「響哉さん、久々にお母さんに逢ったのにお話しなくていいの?
 どうして、佐伯先生は響哉さんの姿になって私を助けてくれたの?
 それから――、私を狙ってきたヤツは結局なんて言ってたの? 私全然分からなくて――」

止まらない疑問は、響哉さんの唇で、舌で遮られた。

溶けそうなほどの、熱い、キスで。