入り口に立っている響哉さんは、今日もヘアスタイルも衣装も何故だかばっちり決めていて、見るだけで心臓が高鳴ってくる。

「頼太、色々悪かったな」

響哉さんはぽんと佐伯先生の肩を叩いてそう言うと、立ち上がって身動きが取れなくなっている私をいとも簡単にひょいと抱き上げた。

「どちらにしても、今、すぐに彼女に答えさせなければいけないような話ではないでしょう。
 傷の手当をさせて休ませますので、今夜はこれで失礼します」

響哉さんは氷点下を思わせるような声で、一息にそう言うと、響さんの言葉も聞かずに部屋を出た。

「響哉さん――?」

「遅くなって悪かった。
 一度シャワーを浴びてから、頼太に包帯を巻きなおしてもらおうね」

響哉さんはいつものように優しい声でそう言うと、躊躇いもせずに階段をあがっていく。