「……ちょっと、佐伯先生?」

私は慌てて立ち上がる。
それじゃまるで、私が響哉さんにヤキモチ妬いていたみたいじゃない。

「響哉さん、そうじゃないの。私……っ」

見上げると、響哉さんはこれ以上ないってほど嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

「なぁに、マーサ?」

……そうだよね。

私、夕べからずっと一方的に無視してたんだもん。本当に平気だったわけ、ないよね。

本当はきっと、淋しい思いをさせていたに違いなくて……。

私が響哉さんのこと信じずに、勝手に怒っただけなのに。悪いのは私なのに。


私、こんなに優しい響哉さんを、思い込みだけで傷つけていた――。