「そうやって、お前がなんでもかんでも隠すからだろう?
 彼女、一日中お前がMr.Perfectじゃないかって心配して、何も手に付かないようだから俺がこうやって教えてやろうと思ったまでさ」

言うと、佐伯先生は雑誌を響哉さんからぶんどった。

私の前でもう一度、さっきのページを開いてみせる。

「いい?
 これが、ミスター・パーフェクトの正体。
 精子バンクで、長い間ずっと高値で売られ続けている精子の提供者のことだ」

精子バンク――?

思いがけない単語に私はごくりと唾を飲む。

ペギーのやるせなさそうな顔が、脳裏を過ぎった。

「父親の正体は、一応秘密となっているので、その呼称がMr.Perfect」

……そうだったんだ。

響哉さんは黙ったまま、何も言わない。 

「とはいえ、成績優秀、スポーツ万能、金髪碧眼の超美形ってことは間違い無さそうだし、それだけ条件が揃ってる奴が、あの国で無名ってワケもないだろう?」

それはそうよね。
そうして、有名人であれば自然と、特定されてしまいそう――。

「だから、もちろん正体も分かってる。そいつは、ゲイなんだ。そのまま過ごしていれば、自分の子孫が残せないという自覚もあるだろう。
 だからこそ、せめてもの罪滅ぼしに大量の精子を提供してるんじゃないかっていうのが、このゴシップ誌の言ってるところだ」

以上、と言わんばかりに佐伯先生はゴシップ誌を閉じて、言葉を投げた。

「響哉、このくらい、自分で説明したらどうなんだ?
 それとも、彼女に、実はMr.Perfectだと信じさせたかったとか?
 やきもきしている彼女、可愛いもんな」