……どうしちゃったんだろう、私。

響哉さんが急に余所余所(よそよそ)しくなって、不安でたまらなくなって、気づけば靴も履かずに外に走り出て、その腕に抱き上げられている。


なんて、冷静さを欠いた子供じみた愚行に走っちゃったんだろう。

我に返った私は強引に口角をあげて、目の前に居る響哉さんを下から見上げた。

「ごめんなさい、あの。
 なんでもないの。昔の映像がフラッシュバックして、つい、混乱しただけだから。
 あの、気をつけて行って来て」

響哉さんは優しさを閉じ込めた瞳で私を見つめ、蕩けそうな笑いを零した。

「必ずここに帰ってくるから。良い子で留守番していてね」

私を玄関に置くと、くしゃりと髪を撫でて今度こそ本当に出て行った。