それから、私に視線を戻す。
ふわりと笑う笑みはいつもの通りなのに、どうしてそんなに淋しそうな瞳をしているの?

いつもの自信に満ちた響哉さんとはまるで別人じゃない。

「響哉さん?」

「ゴメン、マーサ。
 仕事に行かなきゃいけなくなった。
 代わりに、春花にここに居てもらうから」

「私、一人でも大丈夫だよ?
 お仕事、大変なんでしょう?」

「いや、そっちは大丈夫。
 それより、また急にマーサが倒れるほうが心配だ。
 何時になるか分からないから、先に眠っておいて」

じゃあね、と。
響哉さんは私にキスを落とすこともなく、部屋から出て行った。