「大丈夫。
 俺が傍に居るよ、マーサ」

響哉さんは私を抱きしめて、髪を撫でてくれる。

「……ここって……っ」

私、学校で寝ていたはずなのに。

「連れて帰ってしまいました。学校のベッドより、寝心地良いでしょう?」

「……ありがとう」

いつの間に。

「辛かったら泣いていいんだよ。
怖い夢を見たんだろう?」

「どうしていつも泣かせようとするの?」

響哉さんはふわっと私の頭を撫でる。

「泣いてる顔がソソるから」

「……っ!」

耳元に注がれた低く甘い声に、思わず顔を赤らめ彼の顔を見上げる。

響哉さんは、優しい瞳で微笑むと私の頬に自分の頬を押しあてた。
まるでキスでもするかのように、そっと柔らかく。

ドキン、と。
心臓が甘い疼きをあげる。

「冗談。
 マーサは、泣くのを我慢する子だからね。
 俺の傍に居るときくらい、好きなだけ泣いていいのにって、ずっと思ってた」

思いがけず静かに囁かれた言葉には、保護者を思わせる温かい響きがあった。

だから。

私の瞳から自然に涙が零れていく。
響哉さんは、気が済むまで私を泣かせてくれた。