「清廉(せいれん)……。何の用だ。邪魔するな」


 そう強がっても清明は、セイレンなる人物の登場に焦ったようで。


 私を捕まえる腕の力が、一瞬弱まった。


 それを見逃さず私は、逃げ出した。


 「助けて……!」


 私は清廉の元へ駆け寄り、すがり付いて助けを求めた。


 この時はじめて私は、清廉の顔を見た。


 高貴な目鼻立ちをしていた。


 装束は清明のものに似ているが、そんな派手に着飾ってはいない。


 どちらかといえば、青系の落ち着いた色合い。


 彼もまた、長い髪を一つに束ねている。


 清明のことを「兄上」と呼んでいたので、弟?


 「清廉、その女を渡せ」


 清明は清廉に要求した。


 「お断りいたします」


 清廉はきっぱりと拒絶した。


 毅然とした態度で。