「入水自殺かと思って、慌てて取り押さえたんだ。その時のお前の顔は、鬼気迫るものがあった。そしてそのまま意識を失った」


 「私はその前後のこと、何も覚えていない……」


 私はその時すでに、魂は水城島に向かっていたのだろう。


 清廉に巡り会うために。


 清廉。


 あれから幾つも季節が過ぎても、やはり忘れられない。


 たとえそっくりな人が、隣にいても。


 結局は別人……。


 そして再び、後悔の波が押し寄せる。


 どうしてあの時、私は清廉の手を離してしまったのだろう。


 二人して波から逃れる方法はなかったのか。


 いや、一人だけ助かって悔やむくらいならいっそ私が、清廉の盾となって命を投げ出していれば。


 「おいおい、また俺を見て泣くのかよ」


 清春は困り果てた声を出す。


 「お前、何回俺を周囲に、悪人だって誤解させる気だよ」


 夕暮れの海。


 行き交うカップルが案外多い。


 彼らは通りすがりに、私たちをちらっと見る。


 泣いている私と、横で当惑している清春。


 この構図で周囲が思い描く予想図は、だいたい想像が付く。