「あっ!」


 私は木の根につまずいて、転んでしまった。


 森に突入し、しばらく走り続けていると。


 だんだん木々は生い茂り、辺りは薄暗くなってきた。


 そういえば波にさらわれた時は真夜中だったのに、気がつけば太陽の降り注ぐ昼間になっていたことをこの時悟った。


 「痛……!」


 派手に転倒してしまった。


 よく考えたら、私は裸足。


 あちこちすりむいている。


 そして全身草と土まみれ。


 ジーンズの下の膝が、ひりひり痛い。


 すりむいたようだ。


 だけどここで脱ぐわけにも行かないし、そのまま私は走り続けた。


 やがて少し木々は少なくなり、笹薮に覆われた場所へと変わった。


 熊が出るんじゃないか、そんな恐怖すら忘れるくらいに、私は逃げることに夢中だった。


 その時だった。


 「うわっ!」


 笹薮から外に出た私は、いきなり斜め横から現れた馬にぶつかりそうになった。