……。


 「間に合った……」


 津波に追いつかれる前に、私と清廉はこの島の最も高台に位置する、水城家の屋敷に到達した。


 念には念をということで、避難してきた人々は少しでも高い場所である裏山に全員登ってもらった。


 かつて私と清廉が星を眺めた、懐かしい場所。


 「最善は尽くした」


 辺りの人々は皆、裏山の最上部にたどり着いた。


 この時点で人々は迫り来る津波を視界にとらえ、私たちの警告が事実であったことを知り、恐怖に震えている。


 でも裏山以外に逃げる場所もないので、ただひたすら津波がここまで来ないよう、祈ることしかできなかった。


 私たちが見おろしていると、海岸線の集落が、港が……。


 次々と津波に飲み込まれていく。


 私たちの言葉を信じずあの辺りに留まった人たちは、全て犠牲になってしまった。