避難船が出港するなど、物々しい雰囲気を感じた人たちが、ようやく何人か避難の準備を始めた。


 私は清廉と共に馬で、高台にある水城家の屋敷に戻り、そこを避難所として解放する準備に取り掛かろうとした時のことだった。


 「瑠璃。東の水平線が盛り上がっていないか?」


 坂の中腹から東の沖合いを眺めた時のことだった。


 清廉が海の異変に気がついた。


 ……津波だ。


 東側の海から津波が真っ直ぐに、この島へと向かって進んでいる。


 ついに来た……!


 言い伝えが真実であることが、今証明されつつある。


 「瑠璃、早く屋敷へ!」


 清廉は白馬の手綱を引き、速度を上げようとした。


 その時。


 「待って!」


 私は坂の途中で、うずくまっている老婆を見つけた。


 清廉を信じてここまで自力で逃げてきたものの、もう限界で歩けないようだ。