「さっきも言ったじゃないか、水城家の……。ああ正式には、水城島って呼ばれているけど」


 「ミズキトウ?」


 「あんた、記憶喪失かい? 水の城の島で水城島、だよ」


 水の城……!


 私は衝撃を受けた。


 「何ですって、水城……!」


 あの、海に沈んだ伝説の島は、「水の城」という名で古老たちに伝わっていた。


 「あんた、もしかして頭打ったんじゃないの? 先生、もっと診察したほうが」


 先生、と呼ばれた医師っぽい中年男性が、私の熱を測ろうとした。


 「あのっ! 今年は西暦何年ですか!?」


 医師の手を振り払い、私はまた尋ねた。


 「セイレキ? 何だねそれは」


 医師は不思議そうな顔をした。


 本当に「西暦」というものが分からないらしい。


 「じゃ、じゃあ今年の元号は……、平成何年ですか? 天皇は……」