「それは勿論、事と次第によりますね。」

そら見ろ…。

誰だって、
そう思うに決まっている…!!

彼方は、渡されたコップを両手で握りしめた。


薄汚い獣に汚された自分には、事も次第もなかった…。

だが…

本当は、仕方ない事だと諦めていたのは幼かった自分自身…。

そんな、
穢れた自分を望む者など…。

「ですが…。

彼方ならいいと思ったんです。」

驚いて顔を上げると、

自分を見て優しく微笑む香澄の顔が
そこにあった。

「騎士の力の導きで出会った僕達ですけれど…

それだけじゃなく、
単純に彼方と仲良くなりたい、って思ったんです。」

「私と…仲良く…?」

彼方の手を取り、
労るように
香澄はそっ…と握りしめる。


「これは、勝手な思い上がりですけれど…。

自分を傷つけるように
人を寄せ付けようとしない彼方の心を

僕が癒す事が出来たら…って思ったんです。」

何かに打たれたように…

彼方は、その真剣な瞳から
目を反らす事が出来なかった。