少し後…。

彼方は胃の中の物を全て吐き、
ぐったりと床に額をつける。


…香澄が桶を持ってきてくれたお陰で、部屋も洋服も汚す事はなかった…。

「さあ、うがいして下さい。」

香澄は、洗面台で手を洗った後、

水差しからコップに水を入れ、
彼方に差し出す。

…犯しかけた相手に
ここまで世話をされるとは……。

情けない気持ちで彼方は
呟いた。

「……汚い物を触らせて……
すまなかった……」

「…汚いなんて思いませんよ。

彼方が楽になる方が大切ですからね。」

香澄はそう言って、にっこりと微笑む。


……信じられん……!

こいつ…

私の、
あんな姿を見たはずなのに……。

そんな相手の汚物まで、

その細く白い指で触ったはずなのに……。

「…落ち着いた所で、先程の質問に答えたいんですが…」

「質問……?」

「はい。

仕方なかったら、
誰にでも こんな事されて
いいのか、ってやつです。」

「あ…。」