まるでそれが、
見るに耐えない
汚ならしい物であるかのように…。

床の上に落ちた手紙から目を反らした時、

携帯電話のバイブが鳴り始めた。


ファイルケースの横に転がっている
携帯を手に取り、

着信相手を確認してから
通話ボタンを押す。


「……何か用事か?」

『……彼方…。


前にも言いましたが、

電話に出る時はまず、
『はい、もしもし。』
って言わないと駄目ですよ。』

「…そんな事を言う為に
電話して来たのか。」

『まさか……』

電話の向こうから、
香澄のクスッ!っと笑う声が聞こえる。

『今、買い物がてら外を歩いてたら
お茶を飲みたくなってしまって…。

1人だと味気ないですし、
節介だから彼方を誘おうと思って電話しました。』

いたずらっぽく自分を見つめる香澄の顔を想像しながら、

彼方は溜め息をつく。

「…私が行きたくないと考えるとは思わないのか…?」

『…彼方は来てくれますよ。』