「おはよう颯」
僕は、バス乗り場のベンチで本を読んでいる一人の男子 ――颯に声をかけた。
「遅いぞ蒼翔」
颯は本をしまって立ち上がった。
「ちょっとね…」
「1本早い電車に乗れないのか?」
「んー…ちょっと考えてみるよ」
「考える?いつも何してんだ?」
立ち上がり僕より高くなった颯を僕は苦笑いで見上げた。
「ちょっとね……」
「ちょっとってなんだよ。くだらねぇ理由で俺の事待たせてんじゃねぇだろーな?」
僕は危険を感じ、逃げようとした。
だが、
「逃げんな」
「うわっ!」
颯は逃げようとした僕の腕を引っ張って僕の耳元で囁く。
「俺から逃げられると思うなよ?」