もう既に座席は座れなかったため、僕は美雨を自分の体と壁の間において本を読み始めた。
僕の身長が160cmなのに対して美雨は145cm、僕より15cmも小さい美雨は僕の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
「…………ほんとにちっちゃいな」
ふと美雨を見てそう思った。
美雨はむすっとしてそっぽを向いた。
「チビで悪うござんした」
「おかげで守りやすいから助かってるよ?」
美雨は今の自分の状態を思い出し、笑った。
その時、美雨のケータイが鳴った。
『美雨、おはよう。今日も大丈夫?』
それは美雨の彼氏の和真からだった。
『おはよう和真。今日も大丈夫だよ』
そう返信して美雨は笑った。
「さっきのことは和真には内緒ね♪」
「ふっ…りょーかい」
そう言って僕も笑い返した。
『次は終点……』
その時電車のアナウンスが聞こえた。
電車から降りて、和真とバトンタッチする。
「碧、今日もありがとな」
「おう。気をつけろよ?」
二人と別れたあと、僕はすぐさまバス乗り場にむかった。