塾の帰り道、本当に例の男は後ろを
着いてきた。
「お前、麻里菜のなんなの?」
手を繋いで、伊藤を後ろに隠すようにして、例の男に聞いた。
初めて、手を繋いで名前を呼んだ。
そしたら、ヤツは、
「麻里菜の彼氏だ。
お前こそなんなの?」
伊藤の手が震えている。
優しくもう1回握りしめた。
「俺は、麻里菜の彼氏だ。
今後一切麻里菜と関わらないで
欲しい。」
そう言って、伊藤を家に送り届けた。
「今日はありがとう。
夜遅くにごめんね。
おやすみ“健人くん”」
「おう、大丈夫だ。
明後日も、迎えに行くから。
おやすみ“麻里菜”」
もう少しで別れられるって
思ったけど、これじゃ別れるどころか、絆が強まったって、
思われてるんじゃないか?
それからも、塾の帰り道は送っている
でも、手も繋がないし寄り道もなにも
しない。
だけど、1つだけ変わったことがある
それは、名前で呼ぶこと。
ここまで来たら、麻里菜としっかり
向き合わないとな。