「俺ね、結依が俺のこと好きって
 言った時、すんごく嬉しかった。

だって俺も結依のことが
 好きだから。」


この台詞にすごく驚いた。

私は、迷惑しかかけてないのに、
嬉しいって言ってくれた彼の優しさ。
そして、私を好きって
言ってくれたこと。


「でもね、結依も知ってると
 思うけど、俺、彼女いるの。


その相手とは、ちょっと
 いろいろあって
付き合うことになったけど、
正直お互い好きじゃないんだよね?


こんな、俺だよ?それでも好き?」


「うん…好きだよ…」


私は、正直に語ってくれる広瀬くんに
対して私も素直な気持ちで
返すことを決めた。


「ありがとう。

それでね、その相手なんだけど、


………伊藤なんだよね…」


「えっ…?

ど…う…して……?」


よく分からなかった。

彼女がいるのは知っててもしかしたら
私も知ってる人と思って覚悟してた
けど、まさか麻里菜だとは思いも
しなかった。


「たしか、5月の前半かな?

伊藤に告られたんだよね?
それで、正直その時はもう
 椎名のことが好きだったんだよ…。

でもね、言い訳にしか聞こえないと
思うけど、告白を受けようか
 断ろうか迷っていたんだよね。


結依は、すごくモテるし純粋
 だから、俺なんかじゃ
 釣り合わないって思ったの。


で、自信なくして自分が良く
 分からなくなった時に、
 伊藤からLINEが来て軽い
 気持ちでOKしたんだよね…」


「そうだったんだ…」


麻里菜が広瀬くんを好きだなんて
気づきもしなかった。

しかも、告白までするなんて…
5月の前半ってことは、麻里菜に私が広瀬くんを好きって言った頃だ。


「伊藤に、何回か別れ話したことが
あるんだよね?でも、その度に
 伊藤が大泣きして水川が怒鳴り
 こんで来て
なかなか別れられないの。


だから、結依の気持ちが
 変わらなければ
なんだけど、事が片付いたら
俺ら…付き合えないかな……?」


広瀬くんに告白?された。
心臓が飛び出そうなくらい
バクバクいってる。

でも、片付いたらってことは麻里菜と別れてから。

麻里菜が傷ついている横で
幸せになってもいいのかな?


でも、それは言い訳で綺麗事で
私は結局、自分勝手なんだ。だから、


「うん…ありがとう…
私…待ってるね……」


「ありがとう。結依。」


大切な友達を裏切る様なことを
してしまうんだ。


その事の重大さに気づいたら知らぬ間に涙が出ていた。