遠く。

体育館の角、舞台から遠く離れたこの場所から見えたのは淡いピンクの中世風のドレスに身を包んだ一人の女の子。栗色の柔らかそうな髪が彼女が舞台を歩くたびにふわりふわりと揺れて。まるで光の当たったその場所だけ、この世界から切り取られた異空間。お伽話の絵本の一部を切り取ったようなそんな感じ。

そんな彼女のは一歩、また一歩と舞台の中央を目指しながら紅く潤う唇から歌を紡ぎ出した。甘く蕩けるようなそんな歌声で、こんな遠くにいる俺の目も耳も…心も。








感覚全てを支配する。












気が付けば、俺自身も周りの観客同様舞台に向かって前のめりになりながら彼女に夢中になっていた。