○○side

「…なんだって俺がこんなとこに」

どうして暗くて閉鎖的な空間に一人でいなくちゃならないんだ。

知り合いのいない完全なアウェー感の中、この花筐高校の学園祭でメインイベントとして取り上げられていた演劇部の劇を体育館の扉のすぐ近く、壁にもたれかかって遠くから拝見していた。演目は《花の乙女》。中世のある町で繰り広げられる恋愛…と配られたパンフレットに書かれていた。恋愛モノか、詰まらない。客席から度々上がる歓声に顰めっ面をしながら唯一光が溢れる舞台に視線を移す。早くあいつら来ないかなと一緒にこの花筐高校にやってきた中学の同級生たちの顔を思い浮かべながらくあっと大きなあくびを漏らす。詰まらない、眠たい、うつらうつら睡魔に襲われて目を閉ざしかかった時、今までとは比べ物にならないほどの歓声と悲鳴が入り混じったような轟くような声が空間を支配した。

「な、何事だ?」

ぱちくりと目を瞬かせ、あたりをキョロキョロと見渡すと先ほどまで大人しかった客席は総立ち。男も女もなりふり構わず舞台に向かって手を伸ばしている。



一体、なにが起こっているというんだ。