「先輩お疲れ様です!」

盛大なカーテンコールの狭間で淡い紅色の花びらが舞う舞台の上、隣には後輩からの花束が受け渡され号泣する先輩がいる。本当なら私がいるこの場所は彼女が立つべき場所だった。

「英(ハナブサ)、何不安げな顔してんだよ!」

突然鼓膜を震わせた聞き慣れた声に振り向くと、中世の町娘の装いに身を包んだ同じ演劇部の先輩の笑顔が飛び込んできた。

「亜衣先輩…」
「お前まだ気にしてんの?無事カーテンコールも貰えて、この劇が大盛況だったのはお前が主役をやってくれたからだよ。確かに一年に主役を取られちまった私らの立場を考えると暗くなるのも分かるけど、あいつの顔見てみ?あんな嬉しそうな顔してる」

ボーイッシュな話し方や振る舞い方をする亜衣先輩が指差した先には号泣しながらも輝くような笑顔をこぼす先輩の姿。
それを見て少し安堵を漏らす私の背中を亜衣先輩がそっとカーテンの向こうへと押し出す。

「ほら挨拶行くよ!英!」
「はい!」