『先に行けよ』

会社に近くまで来て、修が私にそう告げた。

・・・やっぱり一緒に出社するのはおかしいよね。


私は修の言葉に従って、先に出社した。

「…おはようございます、部長」

「おはよう、矢沢さん」


…今日は、部長の方が先に出社していた。

・・・先に独りで出社して正解だったと思った。


「今日はお早い出社ですね」

「あ~、はい。昨日遅くまで会社で仕事してたんですけど」

「…ぇ、あれから、まだ仕事してたんですか?」


「はい、どうしても、やっておかなければいけない仕事がありまして。

でも、なかなか終わらないから、こうやって早く出社して、

今やっと仕事を仕上げたところですよ」

そう言って困ったように笑った誠を見て、私も、少しだけ笑った。



「私が何か手助けできることがありましたら、何でも言ってくださいね。

残業なんて、ちっとも苦になしませんから」


私の言葉に、誠は微笑んだ。


「ありがとう、何かと助けてもらえるのは嬉しいけど、

残業は程々にしないとね?女の子は、遅い夜道を一人で歩くものじゃありませんから」